
家の住み替えやライフスタイルの変化で、住宅ローンが残っている家を売却したいと考える方は少なくありません。
「ローンが残ったままでも家は売れるのだろうか」「銀行にはいつ連絡すればいいのか」と不安に感じることも多いでしょう。
結論から申し上げますと、住宅ローンが残る家でも売却を検討することは十分に可能です。
ただし、売却時には買主へ引き渡すまでにローンを完済し、設定されている抵当権を抹消する見通しを立てる必要があります。
不動産会社の査定額だけで「売れる」と判断してしまうと、後から資金が足りなくなる可能性があります。
また、仮にローン残高が手取り見込み額を上回る「オーバーローン」の状態であっても、自己資金の活用や住み替えローンなど、複数の対応方法が存在します。
この記事では、住宅ローン返済中の家を売る際に必要な確認事項から、銀行への連絡タイミング、そして決済当日の具体的な手順までを時系列でわかりやすく解説していきます。
この記事のポイント
- 住宅ローンが残る家を売るための基本条件と進め方
- ローン残債と売却後の手取り見込み額を比較する具体的な方法
- アンダーローン・オーバーローンそれぞれの状態と適切な対応策
- 資金計画を安全に進めるための売り先行・買い先行と住み替えローンの考え方
- 銀行への連絡時期、ローン完済手続き、抵当権抹消、決済日当日の流れ
結論|住宅ローンが残っていても家は売却できる
記事の結論として、住宅ローンが残っている状態であっても、家を売却することは可能です。
ただし、通常の売却とは異なり、金融機関との調整や確実な資金計画が求められます。
引き渡しまでにローン完済と抵当権抹消の見通しが必要
住宅ローンが残っているからといって、不動産の売却自体が禁じられているわけではありません。
一般的には、家を売却した際に買主から受け取る売却代金を利用して、残っているローンを一括で完済する方法が取られます。
不動産を売却して買主へ引き渡す際には、原則として物件に設定されている金融機関の「抵当権」を外す(抹消する)必要があります。
抵当権とは、万が一ローンの返済が滞った際に、金融機関がその物件を差し押さえて競売にかけることができる権利のことです。
買主からすれば、他人の借金の担保になっている家を買うことはリスクが高すぎるため、抵当権が抹消されたクリーンな状態で引き渡しを受けることが売買の絶対条件となります。
この手続きは、売主個人だけで進められるものではなく、不動産会社、ローンを借りている金融機関、そして登記手続きを担う司法書士と連携して進めることになります。
ローン完済の見通しが立たないまま見切り発車で売買契約を進めてしまうと、最悪の場合、契約違反となり違約金が発生する恐れもあるため注意が必要です。
最初に確認する3つの数字
売却の見通しを立てるために、まずは以下の3つの数字を正確に把握することが出発点となります。
最初に確認すべき3つの数字
- 現在の住宅ローン残高(いくら借金が残っているか)
- 家の売却見込み額(いくらで家が売れそうか)
- 仲介手数料などの売却諸費用(売却にいくら経費がかかるか)
これら3つの数字が揃って初めて、「今の家を売ってローンを完済できるのか」「手元にいくら資金が残るのか、あるいはいくら不足するのか」という具体的な計算が可能になります。
売却価格ではなく手取り見込み額と残債を比較する
不動産会社に査定を依頼すると、「この家はおおよそ〇〇万円で売却できるでしょう」という査定額が提示されます。
ここで非常に多くの方が陥りやすい誤解が、「査定額=そのままローン返済に使える金額」と考えてしまうことです。
家を売却する際には、不動産会社へ支払う仲介手数料や、契約書に貼る印紙税、抵当権を抹消するための登記費用など、様々な諸費用が発生します。
そのため、実際にローン返済に充てることができるのは、売却見込み額からこれらの諸費用を差し引いた「手取り見込み額」となります。
手元資金を確認する計算式
売却見込み額 − 売却諸費用 − 住宅ローン残債 = 手元に残る金額(または不足額)
なお、査定額はあくまで「この価格なら売れる可能性が高い」という目安であり、実際の売却価格を保証するものではありません。
また、決済前には固定資産税や都市計画税などの日割り精算金も発生します。
最終的な完済予定額については、利息や繰上返済手数料を含めて金融機関へ正式に確認する必要があります。
住宅ローンが残る家を売る全体の流れ

ローン中の家を売る手続きは、大きく7つのステップに分かれます。
全体像を把握しておくことで、次に何をすべきかが明確になります。
ローン中の家を売却する7ステップ
- ステップ1:住宅ローン残高を確認する
- ステップ2:不動産会社へ査定を依頼する
- ステップ3:残債と売却後の手取り額を比較する
- ステップ4:売却方法と住み替え計画を決める
- ステップ5:媒介契約を結び売却活動を始める
- ステップ6:売買契約後に銀行へ完済手続きを依頼する
- ステップ7:決済日にローン完済・抵当権抹消・引き渡しを行う
それぞれのステップについて、具体的に見ていきましょう。
ステップ1 :住宅ローン残高を確認する
まずは、現時点で住宅ローンがいくら残っているのかを1円単位で確認します。
確認方法としては、金融機関から定期的に送られてくる「返済予定表」や「残高証明書」を見るのが確実です。
最近では、インターネットバンキングのマイページからいつでも最新の残高を確認できる金融機関も増えています。
手元に資料がない場合は、借り入れをしている金融機関の窓口やコールセンターへ直接問い合わせてみましょう。
記事を読んで情報収集をしている初期段階であれば、おおよその概算残高でも構いません。
ただし、最終的な決済前には、日割りの利息や全額繰上返済にかかる手数料を含めた正式な完済予定額を確認することになります。
また、ボーナス払いを併用している場合や、直近で繰上返済を行った場合は、残高のズレが生じやすいため注意が必要です。
ステップ2 :不動産会社へ査定を依頼する
ローンの残高がわかったら、次は「家がいくらで売れそうか」を把握するために、不動産会社へ査定を依頼します。
この時、できれば複数の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定額とその根拠となるデータを比較検討することをおすすめします。
周辺の似たような物件が過去にいくらで売れたのか(成約事例)や、現在売り出し中のライバル物件の状況などを踏まえ、現実的な売却見込み額を探ります。
ここで重要なのは、提示された査定額が一番高いからといって、その会社にすぐ決めてしまわないことです。
前述の通り、査定額は売却価格の保証ではありません。
相場より意図的に高い査定額を出して契約を取ろうとするケースもあるため、「なぜその価格で売れると見込んでいるのか」という販売戦略までしっかりと確認することが大切です。
ステップ3: 残債と売却後の手取り額を比較する
ステップ1とステップ2で集めた数字をもとに、売却見込み額から仲介手数料などの諸費用を差し引き、手取り見込み額を算出します。
そして、その手取り額と住宅ローン残高を比較します。
この比較によって、売却代金だけでローンを完済できる「アンダーローン」の状態なのか、それとも売却代金だけではローンが残ってしまう「オーバーローン」の状態なのかを判断します。
この判断が、今後の資金計画を左右する重要な分岐点となります。
ステップ4 :売却方法と住み替え計画を決める
アンダーローンかオーバーローンかが明確になったら、具体的な売却方法と、住み替える場合はそのスケジュールを決定します。
アンダーローンであれば、そのまま通常の売却活動へ進むことができます。
一方、オーバーローンの場合は、不足する金額をどのように補うかを決めなければなりません。
自己資金(貯金など)から持ち出すのか、新居の購入資金と合わせて住み替えローンを利用するのか、あるいは今は売却のタイミングではないと判断して計画を延期するのか、といった選択肢から現実的な方法を検討します。
また、住み替えの場合は、今の家の売却を先に進める「売り先行」にするか、新居の購入を先に進める「買い先行」にするかも、この段階で方針を固めておきます。
ステップ5 :媒介契約を結び売却活動を始める
売却の意思が固まったら、信頼できる不動産会社と「媒介契約(ばいかいけいやく)」を結び、正式に売却活動をスタートさせます。
媒介契約を結ぶ際には、担当者と話し合いながら、実際に市場へ出す「売り出し価格」を決定します。
査定額をベースにしつつ、住宅ローンを完済するために最低限確保したい金額(最低売却価格)や、もし長期間売れ残ってしまった場合の値下げのタイミング・ルールについても、あらかじめすり合わせておくとスムーズです。
媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があり、それぞれ報告頻度や他社との重複契約の可否などのルールが異なります。
自身の売却方針に合った契約形態を選びましょう。
ステップ6: 売買契約後に銀行へ完済手続きを依頼する
購入希望者が現れ、価格や引き渡し日などの条件交渉がまとまると、買主と「売買契約」を締結します。
売買契約が済んだら、決済日(引き渡し日)の目標が定まりますので、借り入れ先の金融機関へ連絡し、住宅ローンの全額繰上返済を申し入れます。
この連絡では、決済当日の正確な完済予定額、繰上返済にかかる手数料、手続きに必要な書類などを確認します。
金融機関側でも、抵当権を抹消するための書類を準備する時間が必要となるため、売買契約後は速やかに連絡し、手続き期限に遅れないよう手配することが重要です。
ステップ7 決済日にローン完済・抵当権抹消・引き渡しを行う
いよいよ迎える決済日当日は、売主、買主、不動産会社、そして登記を担当する司法書士が銀行の会議室などに集まり、一連の手続きを同時進行で行います。
買主から支払われた売却代金の残金を受け取り、その資金を使って金融機関へ住宅ローンを一括返済します。
完済が確認されると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が交付されます。
司法書士がその書類を受け取って法務局へ登記申請を行い、同時に物件の所有権を買主へと移転します。
最後に、物件の鍵や関係書類を買主へ引き渡し、無事にすべての取引が完了となります。
アンダーローンとオーバーローンの違い
住宅ローンが残る家の売却では、手取り見込み額とローン残高のバランスによって、資金計画が大きく変わります。
ここでは、アンダーローンとオーバーローンの違いについて詳しく解説します。
アンダーローンなら売却代金で完済しやすい
「アンダーローン」とは、家を売却した後の手取り見込み額が、現在の住宅ローン残債を上回っている状態を指します。
たとえば、ローン残高が2,000万円で、手取り見込み額が2,500万円の場合などが該当します。
この状態であれば、買主から受け取る売却代金の中からローンを全額完済できるため、自己資金を持ち出すことなく抵当権を抹消することが可能です。
さらに、完済した後に手元に残った資金(この例では500万円)は、新居の購入資金の頭金や、引っ越し費用、新しい家具の購入費などに自由に充てることができる可能性があります。
資金計画の自由度が高く、通常の不動産売却とほぼ同じ感覚で進めやすいのが特徴です。
ただし、査定額の段階でギリギリのアンダーローンだと安心はできません。
実際の売却価格が値引き交渉などで下がってしまったり、想定外の修繕費用が発生したりする可能性も考慮し、余裕を持った資金計画を立てることが大切です。
オーバーローンでは不足額への対応が必要

「オーバーローン」とは、家を売却した後の手取り見込み額よりも、住宅ローン残債の方が大きい(上回っている)状態を指します。
たとえば、ローン残高が3,000万円残っているのに、手取り見込み額が2,500万円にしかならない場合です。
このままでは、売却代金をすべて返済に充てても500万円のローンが残ってしまいます。
前述の通り、ローンを完済できなければ原則として金融機関は抵当権の抹消に応じてくれません。
抵当権が抹消できなければ買主へ家を引き渡すことができないため、この不足額(500万円)をどのようにして埋めるか、具体的な対策を講じる必要があります。
オーバーローンの場合は、売買契約を結ぶ前に、確実に不足分を補填できる資金計画を固めておくことが極めて重要になります。
査定額が残債を上回っていても安心とは限らない
ここで改めて強調しておきたいのは、「不動産会社の査定額」が「ローン残債」を上回っているからといって、無条件にアンダーローンだと判断するのは危険だということです。
売却には様々な諸費用がかかります。物件や取引条件によって異なりますが、一般的には以下のような費用が差し引かれる可能性があります。
- 仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税が一般的な上限)
- 印紙税(売買契約書に貼付する印紙代)
- 登記関係費用・司法書士報酬(抵当権抹消や住所変更登記など)
- 全額繰上返済手数料(金融機関へ支払う手数料)
- 引っ越し費用・仮住まい費用
- 測量費・解体費・残置物処分費(土地や戸建ての場合、必要に応じて)
これらの諸費用を合計すると、売却価格の4%〜7%程度になることも珍しくありません。
査定額の時点ではプラスに見えても、これらの費用を差し引くとマイナスに転じてしまう「隠れオーバーローン」のケースも存在するため、事前にすべての費用項目を洗い出しておく見通しを立てる必要があります。
オーバーローンの場合に検討する4つの方法
手取り見込み額よりローン残債が多い「オーバーローン」であることが判明した場合でも、売却を諦める必要はありません。
主に以下の4つの対応策を検討することができます。
自己資金で不足額を補う
最も確実で一般的な解決策は、不足している金額を自身の預貯金などの自己資金で補填し、ローンを完済する方法です。
たとえば、売却代金だけでは300万円足りない場合、自分の貯金から300万円を出して合わせて返済します。
これにより抵当権を抹消できるため、スムーズに売却手続きを進めることができます。
ただし、手元の現金を大きく減らしてしまうリスクには注意が必要です。
新居への引っ越し費用や新生活の初期費用、さらには万が一の病気やケガに備えるための生活防衛資金まで使い切ってしまうような無理な資金計画はおすすめできません。
自己資金を投入した後の生活費も十分に確保できるかを慎重に見極めましょう。
売却時期を延期して残債を減らす
転勤などですぐに家を売らなければならない明確な期限がない場合は、いったん売却を見送り、時期を延期するのも有効な選択肢の一つです。
そのまま今の家に住み続けながら、毎月のローン返済をコツコツと進めることで、着実にローン残高を減らすことができます。
同時に貯蓄も増やしていけば、数年後にはアンダーローンに転じている、あるいは自己資金で無理なく不足分を補える状態になっている可能性があります。
ただし、建物の築年数が古くなるにつれて、不動産自体の市場価値(売却価格)も徐々に下がっていくのが一般的です。
待てば必ず状況が良くなるとは限らないため、周辺相場の動向などを不動産会社と定期的に相談しながら、最適なタイミングを見極めることが求められます。
住み替えローンを検討する

自己資金での補填が難しく、かつ新居を購入して住み替えたい場合に利用されるのが「住み替えローン(買い替えローン)」です。
これは、今の家を売却しても返しきれなかったローン残債と、新しい家の購入資金を、まとめて1つの新しい住宅ローンとして借り入れることができる仕組みです。
手元の現金を大きく減らすことなく住み替えを実現できる可能性があるのが最大のメリットです。
しかし、新居の担保価値(物件の評価額)以上の金額を借り入れることになるため、金融機関の審査は通常の住宅ローンよりも厳しくなる傾向があります。
利用者の年収、勤続年数、他の借り入れ状況、信用情報などが厳格にチェックされ、審査通過を保証するものではありません。
また、借入総額が大きくなるため、毎月の返済額も増える可能性が高くなります。
利用する際は、新居購入後の生活費や教育費などを考慮した上で、無理なく返済を続けられる計画を立てることが不可欠です。
返済が難しい場合は早めに金融機関へ相談する
もし、すでに毎月の住宅ローン返済が厳しくなっており、滞納しそう、あるいはすでに滞納してしまっているという場合は、一刻も早く借り入れ先の金融機関へ相談してください。
事情によっては、一時的に毎月の返済額を減額するなどの返済条件の変更(リスケジュール)に応じてくれる場合もあります。
それでも返済や通常の売却が困難な場合は、「任意売却」という手段を検討することになります。
任意売却とは、金融機関の同意を得たうえで、ローンを完済できない(抵当権を抹消できない)状態でも特別に物件を売却させてもらう方法です。
競売にかけられるよりも市場価格に近い金額で売却できる可能性があるなどのメリットがあります。
ただし、任意売却は通常の売却とは全く異なる手続きであり、専門的な知識が必要です。
また、信用情報へ影響が出る可能性や、売却後も残った借金の返済義務は継続するケースがあるため、気軽な解決策として選ぶものではありません。
必ず金融機関や不動産会社、弁護士などの専門家へ相談しながら慎重に判断してください。
住み替えでは売り先行と買い先行のどちらを選ぶ?
今の家を売却して新しい家を購入する「住み替え」の場合、どちらの手続きを先に進めるかによって資金計画や生活への影響が大きく変わります。
主な方法として「売り先行」と「買い先行」があります。
| 項目 | 売り先行 | 買い先行 |
| 手元資金 | 売却後に把握しやすいため計画が立てやすい | 売却前は確定しにくく見切り発車になりやすい |
| 二重ローン | 回避しやすい | 発生する可能性がある |
| 仮住まい | 必要になる場合がある(売却と購入の時期による) | 避けやすい |
| 新居探し | 売却後・仮住まい期間など時間が限られる場合がある | 自分のペースで比較的じっくり進めやすい |
| 向いている人 | 資金計画の安全性を優先する人、ローン残債が多い人 | 資金余力が十分にある人、自己資金が潤沢な人 |
売り先行のメリット・注意点
「売り先行」とは、今の家の売却を先に済ませ、売買代金を受け取ってから新居を探して購入する方法です。
最大のメリットは、家がいくらで売れて、手元にいくら資金が残るか(またはいくら不足するか)が完全に確定してから新居の予算を組める点です。
資金計画が狂うリスクが低く、旧居と新居のローン返済が重なる「二重ローン」の状態も回避しやすくなります。
一方で注意点としては、今の家を先に引き渡してしまうため、新居が見つかるまでの間、アパートなどの仮住まいへ引っ越す必要が生じる場合があります。
その場合、仮住まいの家賃や、引っ越し費用が2回分かかるといった負担が発生する可能性があります。
買い先行のメリット・注意点
「買い先行」とは、今の家の売却活動よりも先に、あるいは並行して新居を購入し、引っ越しを済ませてから旧居を空き家として売却する方法です。
メリットは、仮住まいを用意する必要がなく、引っ越しも1回で済むことです。
また、空き家の状態であれば購入希望者の内覧対応がしやすく、ハウスクリーニングなども入れやすいため、良い条件で売れやすい傾向があります。
しかし、今の家が想定通りの価格で、狙った時期までに売れるとは限りません。
もし家が売れる前に新居のローン返済が始まってしまうと、旧居と新居の両方のローンを同時に支払わなければならない「二重ローン」の状態に陥るリスクがあります。
また、新旧両方のローン審査が関係するため、高い年収や潤沢な自己資金などの条件が求められることが一般的です。
資金余力が少ない場合は売り先行を検討する
どちらが絶対に正解ということはありませんが、住宅ローンの残債がまだ大きく残っていたり、手元の預貯金(自己資金)にそれほど余裕がなかったりする場合は、資金計画が確定しやすい「売り先行」を中心に検討することをおすすめします。
新居の購入代金に今の家の売却代金を充てたいと考えている人や、二重ローンによる家計への重い負担を確実に避けたい人は、まずは今の家を適正な価格で売却し、身軽になってから次のステップへ進む方が、精神的にも経済的にも安定した住み替えを実現しやすくなります。
売却前に銀行へ確認すること
不動産会社との間で売却方針が固まってきたら、並行して借り入れ先の金融機関へ連絡し、準備を進めておくべき事項があります。
銀行へ連絡するタイミング
金融機関へ売却の意思を伝えるタイミングについては、「家を売ろうと決めた段階」で早めに一度相談の連絡を入れておくのも良いでしょう。
特にオーバーローンが懸念される場合や住み替えを検討している場合は、事前に相談しておくことで選択肢が広がることもあります。
正式な手続きとして動く必要があるのは、買主が見つかり「売買契約」を結んだ直後です。
売買契約書には物件の引き渡し日(決済日)が明記されますので、その日に合わせて抵当権を抹消できるよう、速やかに全額繰上返済の手続きを依頼します。
金融機関によっては、申し込みから書類の準備が完了するまでに2週間〜1か月程度の日数を要することがあります。
手続きの期限やルールは各金融機関によって異なるため、「決済日の〇日前までに連絡すれば大丈夫」と一律に判断せず、余裕を持ってスケジュールを確認し、不動産会社や司法書士とも日程を共有しておきましょう。
全額繰上返済に必要な手続きと手数料
金融機関へ連絡した際は、単に「完済します」と伝えるだけでなく、具体的な手続きの流れを確認します。
主な確認項目は以下の通りです。
- 全額繰上返済の申し込み手続きの期限(いつまでに書類を提出するか)
- 決済日当日時点での、利息を含めた正確な「完済予定額」
- 繰上返済にかかる手数料の金額
- 返済資金の引き落とし口座(指定口座へ振り込むのか、口座から引き落とされるのか)
- 抵当権抹消書類の受け取り方法(窓口受け取りか、司法書士への郵送かなど)
特に繰上返済手数料は、窓口手続きかインターネットバンキング経由かで金額が異なる(数千円〜数万円程度)金融機関も多いため、事前に確認しておくと安心です。
住所・氏名変更がある場合は早めに伝える
家を購入した当時から、転勤などで住民票を移動していたり、結婚などで氏名が変わっていたりする場合は注意が必要です。
法務局で管理されている登記簿上の住所・氏名と、現在の住所・氏名が一致していないと、抵当権抹消登記を行うことができません。
その場合、抵当権を抹消する前提として、「住所変更登記(登記名義人住所氏名変更登記)」を先に行う必要があります。
住所の変遷を証明するために、住民票だけでなく戸籍の附票など追加の公的書類の取得が必要になるケースもあります。
手続きをスムーズに進めるためにも、住所や氏名に変更がある場合は、早めに不動産会社や手続きを依頼する司法書士へ伝えて指示を仰ぐようにしてください。
ローン完済と抵当権抹消に必要な書類

決済日当日に抵当権を抹消するためには、金融機関が発行する書類と、売主自身が準備する書類の両方が必要になります。
利用している金融機関や取引内容によって細かい書類が異なる場合があるため、ここでは「主な書類」として紹介します。
金融機関が準備する主な書類
ローンを完済したことと、抵当権を外すことに同意したことを証明するために、金融機関から以下の書類が発行されます。
金融機関から交付される書類の例
- 弁済証書または解除証書(ローンが完済され、抵当権が消滅したことを証明する書類)
- 登記識別情報通知または登記済証(金融機関が抵当権を設定した際に法務局から発行された書類)
- 金融機関の委任状(抵当権抹消登記の手続きを司法書士などへ委任するための書類)
- 資格証明書や会社法人等番号に関する情報(金融機関の代表者などの資格を証明するもの)
書類の名称や受け渡し方法(当日に窓口で受け取るか、事前に司法書士宛に送付されるかなど)は金融機関によって異なります。
売主が準備する主な書類
売主側でも、本人確認や所有権移転登記のためにさまざまな書類を準備します。
売主が用意する主な書類の例
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど写真付きのもの)
- 実印および印鑑証明書(発行から3か月以内のもの。複数枚必要なケースあり)
- 登記識別情報または権利証(物件の所有者であることを証明する書類)
- 住所変更を確認する書類(住民票や戸籍の附票など、必要に応じて)
- 振込先口座情報(売却代金を受け取るための通帳やキャッシュカード)
- 物件の鍵や関係書類(管理規約や設備の取扱説明書など)
すべての取引で全く同じ書類が必要になるわけではありません。
決済日が近づくと、不動産会社や司法書士から「必要書類リスト」が案内されますので、それに従って漏れなく準備を進めてください。
抵当権抹消費用の内訳
抵当権を抹消する手続きには、主に以下の費用がかかります。確定した金額と誤認しないよう、あくまで目安としてお考えください。
登録免許税
登記申請の際に国に納める税金です。
基本的には不動産1個につき1,000円です。一戸建ての場合、土地1筆と建物1棟であればそれぞれ1個として数え、合計2,000円となります。
マンションの場合は敷地権の数によって計算が変わることがあります。(※執筆時点の法務局公式情報に基づく)
司法書士報酬
書類作成や登記申請手続きを司法書士へ依頼する際の報酬です。
事務所や依頼内容によって異なりますが、一般的な抵当権抹消単独の依頼であれば1万円〜数万円程度が目安となることが多いです。
その他の費用
前述の住所変更登記が必要な場合は別途その費用と報酬が加算されます。
また、住民票の取得費用や、金融機関に支払う全額繰上返済手数料も発生します。
全体の費用感を把握するために、事前に司法書士や不動産会社から見積もりを取っておくと安心です。
決済当日のローン完済と引き渡しの流れ

不動産売却の最後を飾る決済日は、大きなお金が動き、権利が移転する非常に重要な1日です。
通常は平日午前中に銀行のブース等に集まり、以下の流れで同日に連動して手続きを進めます。
決済当日の進行ステップ
- 司法書士が本人確認と書類確認を行う
- 買主から残代金を受け取る
- 住宅ローンを全額返済する
- 抵当権抹消と所有権移転を申請する
- 精算を行い、鍵を引き渡す
司法書士が本人確認と書類確認を行う
全員が集まったら、まずは司法書士が主導して、売主と買主の本人確認(免許証の提示など)と、取引の意思確認を行います。
続いて、売主が持参した権利証や印鑑証明書、金融機関から受け取る抵当権抹消書類などに不備がないかを厳格にチェックします。
書類がすべて揃い、登記申請が確実に行える状態であることが確認できたら、次の資金移動のステップへ進む合図が出されます。
買主から残代金を受け取る
書類の確認が無事に終わると、買主は自身の口座から売主の口座へ、売買代金の残額(手付金などを差し引いた金額)を振り込みます。
またこの時、日割り計算した固定資産税や都市計画税の精算金なども併せて支払われます。
着金確認には、銀行の混雑状況によってはしばらく時間がかかることがあります。
住宅ローンを全額返済する
売主の口座に買主からの代金が無事に入金されたことが確認できたら、その資金を使って、間髪入れずに金融機関へ住宅ローンの全額返済手続きを行います。
オーバーローンなどで自己資金を補填する場合は、あらかじめ用意しておいた資金と合算して返済します。
金融機関側で着金と完済の処理が完了するのを待ちます。
抵当権抹消と所有権移転を申請する
金融機関から「完済が確認できました」という連絡(または領収書などの発行)を受けると、晴れて抵当権を抹消できる状態になります。
ここで司法書士は、売主側の「抵当権抹消登記」、買主への「所有権移転登記」、そして買主がローンを利用する場合は買主側の「新たな抵当権設定登記」の申請書類をまとめ、直ちに法務局へ向かい登記申請を行います。
これらが連動して行われることで、安全な権利移転が成立します。
精算を行い、鍵を引き渡す
登記申請の準備と並行して、関係者への精算業務を行います。
不動産会社へ支払う仲介手数料の残額や、司法書士への報酬などをそれぞれの口座へ振り込みます。
マンションの場合は、管理費や修繕積立金の日割り精算も行われます。
物件によって精算内容は異なるため、事前の計算書と照らし合わせながら進めます。
最後に、売主から買主へ物件の鍵、管理規約、設備の取扱説明書などを引き渡し、「物件引渡完了確認書」などに署名捺印をして、すべての手続きが完了となります。
抵当権抹消を司法書士へ依頼する理由
抵当権抹消登記は、法律上は資格を持たない本人が自分で法務局へ行って申請することも可能です。
しかし、不動産売却の決済という場面においては、事実上、司法書士へ依頼して手続きを進めるケースが一般的です。それには明確な理由があります。
売却では複数の登記手続きが同時に進む
前述の通り、不動産売却の決済日には「売主の抵当権抹消登記」「買主への所有権移転登記」「買主側の新たな抵当権設定登記」という、利害の異なる複数の重要な登記が同日に連動して行われます。
もし、売主が「節約のために抵当権抹消は自分でやります」と言った場合、買主や買主の金融機関はどう思うでしょうか。
売主がうっかり書類に不備を出してしまったり、申請が遅れたりすれば、その後の所有権移転も、買主のローン担保設定もすべてストップしてしまいます。
書類不備が決済全体に影響する
買主はすでに何千万円という代金を支払っているのに、自分の名義に変更できないという重大なリスクを背負うことになります。
買主に融資をしている金融機関も、確実に一番抵当権を設定できなければ融資を実行してくれません。
つまり、決済の場における司法書士は、単に書類を作成する代行人ではなく、「この取引は確実に登記が完了します」という安全性を担保する立会人としての役割を担っているのです。
そのため、取引の安全を確保する観点から、買主側や不動産会社、金融機関からも司法書士の関与を求められることが一般的となっており、売却決済をスムーズに進めるための必要経費として捉えておくのが自然です。
住宅ローンが残る家の売却に関するよくある質問
不動産売却のご相談を受ける中で、特に多く寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1:住宅ローンが残っていても家を売却できますか?
A:はい、売却を検討することは十分に可能です。
ただし、買主へ物件を引き渡す日(決済日)までに、売却代金や自己資金などを用いて住宅ローンを全額完済し、設定されている抵当権を抹消できる見通しを立てておく必要があります。
Q2:査定額がローン残債を上回れば売却できますか?
A:査定額だけで判断するのは危険です。実際の売却価格から諸費用を差し引いた「手取り見込み額」で判断してください。
不動産会社の査定額はあくまで売れる可能性のある価格の目安であり、売却価格を保証するものではありません。また、売却には仲介手数料や登記費用などの諸費用がかかるため、それらを差し引いた後でも残債を上回っているか(アンダーローンか)を確認することが重要です。
Q3:オーバーローンだと売却できませんか?
A:オーバーローンでも売却できる方法はあります。
不足する金額を自己資金から補填したり、住み替えローンの審査を受けて利用したりする方法が検討できます。また、急ぎでなければ売却時期を延期して残債を減らすという選択肢もあります。利用可能性はご自身の経済状況や個別条件によって異なります。返済自体が難しい場合は、早めに金融機関へご相談ください。
Q4:銀行にはいつ連絡すればよいですか?
A:売買契約後は、決済日に間に合うよう速やかに手続きを開始してください。
「家を売ろう」と方針が固まった段階で事前に相談しておくのも良いですが、正式な手続きは買主との売買契約後に行います。金融機関によって全額繰上返済の申し込み期限(〇日前まで等)や準備にかかる日数が異なるため、早めに確認し、不動産会社ともスケジュールを共有してください。
Q5:抵当権抹消は自分でもできますか?
A:単独の抹消であれば可能ですが、売却決済においては司法書士へ依頼するのが一般的です。
不動産の売却では、売主の抵当権抹消、買主への所有権移転、買主側融資の担保設定などが連動して行われます。取引全体の安全性を確保し、書類不備によるトラブルを防ぐため、関係者から司法書士の関与を求められるケースが一般的です。
Q6:ローンを完済できないまま買主へ引き渡せますか?
A:通常の不動産売却では、完済・抹消できない状態での引き渡しはできません。
買主は抵当権が抹消されたクリーンな状態の物件を引き受けることが売買の条件となります。どうしても不足額が出てしまう場合は、売買契約を結ぶ前に金融機関や不動産会社へ相談し、資金計画を見直す必要があります。
Q7:売却代金は一度売主の口座へ入金されますか?
A:決済方法や利用する金融機関によって異なります。
一般的には買主から売主の口座へ全額が振り込まれ、そこから金融機関へ返済金を送金する流れが多いですが、関係者間で振込の手順を細かく調整する場合もあります。決済前に、不動産会社や司法書士経由で当日の具体的な入金・送金の流れが案内されますので、事前に確認しておきましょう。
まとめ|残債と売却後の手取り額の確認から始めよう

住宅ローンが残っている家であっても、順序立てて正しい手続きを踏めば、問題なく売却や住み替えを検討することができます。
そのための一歩目として最も重要なのは、「住宅ローンの残債」と「諸費用を差し引いた後の手取り見込み額」を正確に算出し、比較することです。
アンダーローンであれば比較的スムーズに手続きを進めやすいですが、査定額を鵜呑みにせず、値下がりや諸費用の支出を見込んだ堅実な計算を行うことが大切です。
もしオーバーローンであることがわかった場合でも、焦る必要はありません。
自己資金での補填や住み替えローンの活用など、不足額に対する具体的な対応策を売買契約前にしっかりと固めておくことで、失敗のない売却を実現しやすくなります。
資金状況に余裕が少ない場合は、手元資金が確定しやすい「売り先行」での進め方を中心に検討すると良いでしょう。
買主が決まった後は、金融機関への早めの連絡を心がけ、決済日に向けてローン完済と抵当権抹消の準備を進めます。
当日は複数の手続きが連動して動くため、自分一人で抱え込まず、不動産会社や司法書士といった専門家と密に連携を取りながら進めることが成功の鍵となります。
まずは、お手元の返済予定表などで現在のローン残高を確認し、信頼できる不動産会社へ現状の査定を依頼して、ご自身の立ち位置を把握することから始めてみてください。
免責事項・注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的として作成しております。
住宅ローンや住み替えローンの取扱条件、審査基準、全額繰上返済のルール等は各金融機関によって異なります。また、審査通過や確実な売却可能性を保証するものではありません。
登記に必要な書類、登録免許税、司法書士報酬などの費用は、物件の条件や手続き内容によって変動します。抵当権抹消や住所変更登記の具体的な手続きについては、依頼する司法書士等の専門家へ必ずご確認ください。
不動産売却に伴う税金の取り扱いについては、税理士または管轄の税務署へ直接お問い合わせください。
住宅ローンの返済が困難な場合の任意売却や条件変更については、借入先の金融機関や弁護士などの専門家へご相談のうえ、個別事情を踏まえた最終判断をお願いいたします。